三月七日、横浜。海からの潮がわずかに春を運んでくる心地よい朝凪に吹かれ、「神奈川県行政書士会」の説明会に出席した。なかなかに「濃い」味わい深い時間だった。言葉の端々にプロの矜持が滲むその空気に当てられ、私はその足で登録申請書を提出した。
こうして今は、印度からの無頼旅から帰還し、事務所開設という名の「新しい試み」に耽っている。ブログを編み、ホームページを構築する。指先が再びキーボードの感覚を思い出し、時間を忘れそうになるのも、また一興。この「生みの愉しみ」は、何物にも代えがたい。
振り返れば、社会という名の荒野を四十年(よそとせ)近くも彷徨ってきた。酸いも甘いも、それなりに飲み込んできた自負はある。だが、いざ「専門」という深淵を覗き込んでみれば、そこには学ぶべき知の巨塊が、インドの北部を覆う「ヒマラヤ山脈」のごとく鎮座しているではないか。私は今、ふたたび「精進」という古風な言葉を噛みしめている。書物と格闘し、海千山千の諸先輩に教えを請う。そうして、一滴ずつ、良質な実力という名の雫を溜めていくしかない。
「あの人に任せて良かった」
誰からもそう言われる行政書士になれたなら、それはそれで愉快な人生の終盤戦といえるだろう。
窓の外では、桜が密やかに、しかし確信を持って芽吹こうとしている。
私の新しい季節もまた、この光の中で、静かに、そして熱く、幕を上げたのである。…つづく?